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NHK土曜ドラマ 『ハゲタカ Road to rebirth』 

全6回、息を飲むようにして観てた。外資ファンドによる日本企業の買収をテーマとしたドラマ。最初は「硬派な社会派ドラマ、かっこいいじゃん。ちょっと頭良くなるかも。映像と音楽も斬新じゃん」なんてお気楽なノリで楽しんでいたのだけど、回を重ねるごとに、遠い世界の話のように思っていたドラマが自分の身にも迫って感じられるようになった。会社とは誰のものか、お金とは何か、会社が買収されることになったら自分はどうするか… 今の時代、だれでも考えさせられるテーマだものね。

血も涙も関係ない投資ファンドの冷徹な手腕に、ある種、胸のすく思いがしたのも事実。だけど感情の堰が切れて涙ぐんでしまったのは、今夜の最終回で田中泯さん扮する老技術者の言葉だった。「(解雇される)仲間の犠牲の上で働いて、そこに希望はあるのか」「(アメリカの軍需産業に部門ごと売却されることで)自分たちの技術がどう使われるのか考えないといけないんじゃないか」。じっと唇をかみしめながら耳をかたむけている部下たち。

「ハゲタカ」ファンドの鷲津(大森南朋さん)が、この老技術者を説得するシーンも珠玉だった。「ファンドなんて所詮『金』目当てなんだろう。金なんかただの紙切れじゃないか」と不信でいっぱいの相手に対し、鷲津みたいに信念を持って対峙できる金融マンが、現実にどのくらいいるだろうか。「私にはただの紙切れには思えない。紙切れのために首をくくる人間もいる」「99.9%のことはお金で何とかなる。でも残りの0.1%はそうじゃない。私はファンドをやって、そのことを学んだ」。数字がお金を生むのではない。人がお金を生む。その痛みや苦しみを心に刻みつけた人の言葉だからこそ、立場の違う相手にも受け入れられたのだろう。そういえば、国を挙げてリストラを進めてきた小泉さんや安倍さんが、一般庶民に向けてこんなふうに語りかけているのは聞いたことがない。

柴田恭平さん演じる芝野の度重なる挫折も、見てて痛々しいほどだった。理想的な企業再生を志していたはずなのに、再び自殺者を出してしまった苦しさ。それだけに最後、鷲津とのプロジェクトが成功して従業員を買収から守ることができたときの笑顔に、こちらまで救われた気持ちになった。

投資ファンドは、病んだ企業を買い叩いて転売することもあれば、従業員も含め再びよみがえらせる力もある。お金というものは、意味のあいまいな道具にすぎない。だけどそれが時には人を泣かせ、時には人に希望を抱かせる。経済オンチのわたしだけど、「お金」と関わらずして生きていくことはできない以上、いろんな意味で覚悟が問われたドラマだったような気がする。
by redandblackextra | 2007-03-25 00:02 | そのほか

観劇と読書が好き。いや、ほかにもあるかな。当面の間は、ぼちぼちマイペースで更新します。
by redandblackextra
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