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> 『ベルサイユのばら』 オスカル編
東京公演前楽というぎりぎりのタイミングで、すべりこみ観劇してきました。
いやー、ベルばらって、こんなに泣く演目だったっけ。

1幕は、オスカルが「祖国のために戦おう」と訴えるたびに、涙がつらつらと。反抗する部下たちに子守唄を歌いだすのは、正直唐突な感じはありました。それでも、オスカルのことを「女だから」と下げずんでいたアランたち衛兵隊が次第に心を開いていく様子をみていると、オスカルの強い信念が胸にしみこんできました。

そして噂に聞いてた「空飛ぶペガサス」。これか! 翼の動きが妙に機械的で、子どもでも笑っちゃいそうなキッチュなつくりです。でも、そこにまたがる朝海ひかるオスカルの神々しいオーラで、おつりがきました。弱い平民を守らなくてはという使命感でいっぱいの彼女、かっこいい…。ペガサスは空中かなり高い位置まで上がってましたね。見てるほうが怖くなるくらいでした。

「オスカルを他の男に渡すくらいなら」と、2幕でアンドレが毒を入れるシーンには驚き。これまで「フェルゼンとマリー・アントワネット編」しか観たことがないせいか、アンドレがこんなふうに心情をあらわにするなんて意外な展開だったからです。ジェローデルとオスカルの結婚話が出たときも、わたしは勝手に「アンドレはオスカルの幸せのために身を引くんだろうな」と思いこんでいたのですが、違ってた。長年抑え付けていた恋心だけに、爆発するときはこんなにも激しいのね。毒を盛ったことを明かしたあと、アンドレは「今日のことは忘れてくれ」と言い、オスカルも彼を責めようとしていませんが、これも意外でした。わたしの中ではアンドレはあくまで控えめな存在だったので、彼は「オスカルに毒を盛ってしまったと」いう罪の意識に耐えかねて、どこかへ逃亡するんじゃないかと予想してたのです。でも、それじゃ物語終わっちゃうか。

パリ出動前夜、二人きりの部屋で、オスカルがアンドレにふと「わたしの生き方は間違ってなかっただろうか」とつぶやいたとき、また涙があふれてきました。なんという言い方をしてくれるのか。唯一心を許した相手にだけ見せる心の奥。この一言だけで彼の愛が分かります。そしてアンドレの有名なせりふ「命をかけた言葉をもう一度言えというのか」で、もう泣くのが止められなくなり…。「今宵一夜」で泣かされるとは思わず、ハンカチを出していなかったので、あわててバッグの中を探す始末でした。

朝海オスカルは、完璧と言っていいほど美しいビジュアルの持ち主。でも心ひかれたのはそれだけじゃありません。かつてのベルナールや衛兵達の非道な行いに対して、咎めるのが当然のところを、「許す」という行為に出ることができる心の深さに打たれました。レミゼびいきのわたしから見ても、「このオスカルの魅力には、アンジョルラスが3人束になってもかなうまい」と思うほど。ま、オスカルは人間の理想の結晶ともいうべき描かれ方だし、アンジョは同じく理想を体現しているとはいえもっと泥臭い状況にいるので、だいぶ違うのですが。

最後のシーンであの世のアンドレとオスカルを乗せた馬車を引っ張る白馬が出てくるのですが、先のペガサス同様、おもちゃみたいでした。本当にヘンなところがいっぱいある作品です。それでも全体を振り返ると、やっぱり「イイ! とってもいい!」と称えたくなってしまうのは、なぜ? オスカルがふりまく魅力の魔法にかけられたのかしら。さすがは宝塚。おそるべしベルばら。
by redandblackextra | 2006-05-21 01:43 | 舞台にまつわる話

観劇と読書が好き。いや、ほかにもあるかな。当面の間は、ぼちぼちマイペースで更新します。
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